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このハカマは金剛平と言って先染め(糸のうちに色を染め)その色糸を織りで組み合わせてつくられたものです。
地色のグリン色は殆ど変色していないのですが、縞模様を構成している白色の糸が変色しているため、地色の
グリン色を残して表面の白糸部分だけの漂白をしなくてはなりません。本来、通常の場合は染み抜き作業のみで
漂白作業まで行うものではありませんが、私共の特殊技術を駆使して染み抜きしたもので、全く跡形無く変色汚
点を除去しました。この後は又同じように変色させない為シミをつけましたらそのままにせずなるべく早めに染み
抜きに出してください。・・・・・・                                   平成27年1月30日完成

平成26年10月1日完成

 ここまでひどい変色汚点を除去する為には、集中したやる気を継続させる事が必要です。受けた以上何としてもお客様に喜んで頂けるようにする事が第一です。結果、約10倍位の手間を想定していましたが、実際は通常の生け洗いしみぬきの20枚分から30枚分の手間がかかってしまいました。更に金彩加工の一部が黒く変色している部分が気になり、金彩加工も行いました。

 こうした手重い品を一旦中断しますと、後なかなか手をかける事が困難となってしまいます。従って私共では私のやる気にスイッチが入っている間に完成させる為、他の作業を一切中断し、集中して完成させるようにしています。

 結果、通常の品より早く出来上がる事が有りますので、お客様には実際はかなりの手間をかけていても、その作業内容をご理解頂くのが難しい場合が有り、作業終了後にお預かりするべきでは無かったかなと反省する事もしばしばです。

 お預かりした以上、依頼者及この着物を着用する方の立場に立ち、着用した際、快く着用して頂くのが第一で、どんなに手間がかかろうと、手をかける度に綺麗になって行くのを楽しみながら、手が止まらなくなってしまいます。どんなに頑張っても新品にはなりませんが、より新品同様に近づける事が大切と思っている職人です。

印象に残る染み抜き例

上記の写真は、変色汚点を除去した帯です。

長年染み抜きに携わり、印象に残る染み抜きは沢山ありましたが、証拠の写真が無いため掲載する事が出来ないでいました。
H25年11月に、経験した袋帯のカビによる変色染みを除去したものを紹介します。


普通に染み抜きしても少し薄くなる程度です。写真の右側てす

ハカマの変色汚点です

 地方によっては結納の際、お姑さんからお嫁さんに袋帯を贈る風習が有るそうです。そうした風習で頂いた袋帯を大切に仕舞っていて、久しぶりに出してみたら、とんでもない事になっていて、地元では一番と言われている染み抜き店に相談しましたが、金織りの袋帯は染み抜きすると黒く変色してしまうので、全く駄目ですと言われ、私共に相談されたものです。

 本来金織りの袋帯はそのお店(染み抜き店)の言う通りです。私共でも同じ応えを出したいところですが、お姑さんから頂いた大切な品なので、何としても直して欲しいと言うお客様の強い要望をお聴き、お預かりしてしまいました。

 幸い品物はかなり高価な品で、しっかりした品でしたので、試験をした結果、何とか綺麗にする事が出来る事が判明しました。縫ったままでの染み抜きは困難な為、全部解いて、帯の芯はお取替えと言う事でお預かりしました。

 変色させないよう,金箔を剥がさないよう細心の注意をはらい、通常の10倍以上の手間をかけておりますが、まれに有る私共の3倍でお預かりしました。

 このような何としても直して欲しいと言われるお客様のご要望にお応え出来た事に喜びを感じた染み抜き結果です。

帯を解いた結果、帯の芯が写真のようにカビていました。芯はお取替えとなります。

上記の写真は20年以上仕舞ったままにしていた袋帯の写真です。縫ってあるままの状態では染み抜きが困難な為、全部解いたものです。写真の中央より左側はすでに試験で綺麗にしたものです。

上の写真は振袖の上前部ですが、ほぼ全体的に多数の変色したシミが存在しています。 

上の写真は特にひどい変色シミとなっている袖の部分です


お預りすべきでは無かった?振袖

 上の写真は縫込みの中の部分まで綺麗に変色汚点を除去したものです。縫込みの中は仕立てれば中に入ってしまうと言う事で残してしまいますと、長い間には残した汚点が影響して再度変色する恐れが有りますので、縫込みの中迄綺麗にして置いた方が賢明です。

 上記の写真のように綺麗にする為には、一回の染み抜き作業だけでは絶対に綺麗にはなりません。この品は一回の染み抜き範囲は500円硬貨程度を7回から10回繰り返した結果です。かなり気の遠くなるような作業が必要で、他の業務を一切中断し、自分自身に気合を入れての染み抜き作業の連続です。

 上の写真は袖の部分ですが、解いて広げて見るとご覧のように縫込みの中まで変色でいっぱいです。
全部解いて胴裏はお取替え、加工料金は約10倍と想定し、まれな3倍と言う事でお預かりしましたが、ここまでひどい変色は始めてです。本来この品は返品すべき品である事は間違い有りませんが、お父様の形見と言う事、比較的布地や模様もしっかりしていて遠方より送って頂いた為、職人のやる気にスイッチが入り、お預かりしてしまいました。

 こうした品の場合、通常の染み抜き店さんが、考えるのは、布地が弱っている可能性が有る為、安全な方法として、染み抜きでは無く、金彩加工を施して染みをごまかす方法をお勧めするのが大半です。小さな染みならともかく、ここまで大きな染みを金彩加工でごまかすのには、かなり無理が有り、ごまかしたつもりが、かえって金彩加工が目立ってしまい着用出来なくなってしまう恐れが有り、商品価値も大きく減少してしまいますのて、金彩加工で染みをごまかす方法はお勧めでは有りません。 

 私共の考えは、染みを付けて20年以上も経過していれば、当然布地も弱っている事は充分考えられますが、どんなに手間がかかっても、金彩加工等でごまかすのでは無く、元の状態に復元するのが、第一だと考えており、布地を痛めず染みだけを除去する方法を研究開発しました。その結果は下記の写真をご覧下さい。