着物の豆知識
防水加工について 
@ 熱いしみは浸透してしまいます。
防水加工、正しくは撥水(はっすい)加工と言います。最近の防水加工はシリコン樹脂やフッソ樹脂が用いられ、防水効果には目を見張るものが有ります。
呉服屋さんによっては全ての商品に防水加工を施し、高級品を売りとしているお店まで出現する程で、防水液も誰にでも簡単に防水する事が出来る様、スプレー式の防水液まで売り出されておりますが、着物の防水には様々な欠点も有りますので、ご注意下さい。
A 油性のしみははじきません。
冷たい水性のしみははじいても、油性のしみ(チョコレート・ガム・マヨネーズ・料理汁・マジックインク・ボールペン)等はしみになってしまいます。
B 静電気が起こりやすくなります。
絹は繊維に水分を保持しているので、あまり静電気は起こらないのですが、防水を施しますと布地の表面の水分を遮断してしまうため、静電気が起こりやすくなってしまい、そのため着物を着た時、静電気が発生して廻りのほこりを吸いつけてしまうため、防水加工をしていない着物の3倍位早く、強く汚れてしまいます。 
 又 防水加工を施した着物は、分かり易く言えばビニールの袋に入れて保管しているのと同様の状態になり、カビによる変色しみも通常の着物より発生しやすいようです。
C しみぬきが困難です。
防水をして有る着物のしみ抜きには、水や薬品をはじいてしまいますので、
しみぬきをする際、しみの部分の防水を取り除かないと、しみ抜きが出来ません。しみを落とす作業より防水を除去する方が手間がかかってしまう場合が有り、加工代も割増となってしまう事が有ります。 
D 染め替えも困難です。
布地の表面の防水液は除去できますが、繊維の中に浸透した防水液を完全に除去するのは困難で、染めた際には大きなムラが出てしま事が有り、樹脂加工染め以外の染め替えはあまりお勧め出来ません。
  以上の欠点から判断して一般の方の着物には、あまり防水加工はお勧め出来ません。防水加工を必要とする着物は、雨ゴートや着物を作業衣として使用される接客業の方の着物、縮みやすい縮緬、染め替えの出来ない絞り、摩擦堅牢度の悪い藍染め製品等には防水加工を施しておいた方が良いと思います。
 着物の種類の分類 
訪問着と
附下げの違い 
訪問着とは白生地のうちに仮縫いをして、模様師さんが一点一点下絵を描き、そこから幾つもの工程を経て染められるものを言います、附下とは型紙によって染められ、その染め技法は小紋染めと同様で、同一柄を大量生産するものを言いますが、模様の合口も会わせて有り、一般消費者が見ては訪問着か附下かの見極めには難しいものが有ります。

最近は附下にも金彩加工や刺しゅうを施したものが有り、これらの商品は訪問着として市場で販売され、取扱は全て訪問着として扱われております。
 訪問着と
色留袖の違い
訪問着と色留袖の違いは、訪問着は裾の模様に加え、前左胸・前左袖・後右背中・後右袖にも模様が配置されていて、色留袖は裾の模様だけで家紋が入っているものを言いますが、関西地方では黒の留袖にも訪問着同様の模様配置がされているものが有り、家紋も入れたものと、入れて無いものが有り、一口にそれだけでの判断は困難です。

私共では着物の裾裏(八掛)に表地とは異なる生地を使用したものが訪問着で、表地と同様の八掛を使用しているものを色留袖と分類しております。

 中振袖と振袖
(本振袖)の違い
振袖は、昔はお嫁さんの衣裳として使用されており、袖口や裾には綿を入れて豪華な作りとなっていましたが、現在では若い方の晴れ着として、重い振袖の作りを簡略し、中振袖として販売され、今では中振袖の存在が主流となっております。一方結婚式のお嫁さんの衣裳は振袖から打掛けと変わってきました。 

現在でも本振袖は流通しておりますが、昔のように袖口や裾にぶ厚い綿を入れる事は無くなっておりますので、一般の方が振袖か、中振袖かを見分ける事は困難です。

私共では色留袖同様、八掛に表地と同様の生地を使用しているものが本振袖で、異なる生地を使用したものを中振袖と分類をしております。

 長襦袢と下着の
違い
下着とは留袖や色留袖等公式の場に着て行く場合に着る下着を言い、生地は一越か羽ニ重の白生地が使われ、着物と同様のお仕立てとなっております。
 
長襦袢は下着を簡略したもので、衽は付いておらず、袖は丸く、袖口から下の縫いつけが有りません。色は様々で柄は無地やボカシ・小紋が主流です。


 湯のしと湯通しと筋消しの違い 
 湯のし   湯のしとは反物状態のものを湯のし機(蒸気発生装置付き)と言う機械によって蒸気を利用して幅を伸ばすものです。
訪問着地・中振袖地・留袖地・喪服地・他洗い張り後の幅出し、反物を着物に仕立てる前の仕上げ等幅広く応用されます。
但し絞りは手のしと言って湯のし機にはかけられません。
 湯通し  湯通しとは大島紬・結城紬等、新品反物状態の時に地糊が強めに入っている反物を柔らかくするために行います。
薄い石鹸水か42度位のぬるま湯に浸して地糊を落とす事を言います。
(湯通しした後には必ず湯のしが必要です。)
 筋消し  筋消しとは仕立てあがっている着物の裄や身幅を広げる際、アイロンでは消えない縫い筋を消したり、チャコやヘラ後を除去し、場合によっては地色の色ヤケ等を元の状態に復元する事を言います。
縫い筋は一種のキズとなっており、霧を吹いてアイロンをかけてもなかなか消えません。私共ではそうした縫い筋を消すため布地の復元方法を考案し、お客様のご要望にお応えしております。布地の硬い織物は消えない場合が有ります。
  洗い張りと生け洗いしみ抜きの違い
洗い張り 洗い張りとは着物全体を解いて反物状態に縫い合わせ、全体の汚れを水で洗う事をいます。水洗いをするため当然地糊も入れかわります。
小紋・無地・大島紬・結城紬・紬・お召し・黄八丈等が洗え、着物の汚れやカビ落とし、又型崩れやサイズ直しの際に利用します。 
着物は家紋が入っていたり、刺繍・シボリ・金彩加工・色止めが不完全な品は洗い張りをする事は出来ません。その場合表地は生け洗いしみ抜きとなります。 
生け洗い
しみ抜き  
生け洗いしみ抜きとは着物全体を石油系の溶剤で洗いますので地糊の入れかえは有りません。
塵やほこり、油汚れ等を取り除いた後、布地の性質や染色状況としみの種類に応じそれぞれに合った技法を駆使してしみ抜きが行われます。
全ての品に同一の作業を施す方法とは異なり、一点一点、一ヶ所ずつの作業となります。 

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着物のリサイクルについて 
 ● 最近、着物のリサイクルと称し、着物を解いて洋服に作り変える方が多くなっておりますが着物地で洋服を作っても、それを着こなせる方は限られます。
 ● 着物地はあくまでも着物として作られたもので、洋服にしてしまうと色や模様がマッチせず着て行く先も大幅に制限され、作ったは良いけれど着て行く先や機会が無いと言う方が大半です。
 ● 又洋服にしてしまいますと後々の手入れ(クリーニング)も困難となる事が多く、苦労されている方も少なく有りません。
 ● 着物姿の女性が美しくなるのは、帯によって窮屈にはなりますが、その窮屈さにより自然に女性らしさが表現されるのです。
 ● リサイクルのイメージはあくまでも再生品(古物)と言うイメージです。一流のデザイナーにデザインを依頼しても、洋服地と着物地とでは織り方や染め方柄が異なりますので、着物をリサイクルした事が直ぐにバレてしまいます。
 ● 他に、中振袖の袖を短くして訪問着として利用される方もおられますが、中振袖は袖を短くしても訪問着にはなりません。何故なら模様の大きさや配置が異なり、色や生地の地紋も中振袖と訪問着では大きく異なります。
 ※ あくまでも着物は着物として、中振袖は中振袖としてご利用頂く事をお勧めします。

 
 しみ抜き専門用語 
 肉じみ 肉じみとは蛋白質系のしみが固まってしまったものを言います。蛋白質系のしみとは、血液や人乳、よだれ、牛乳、卵、肉汁、魚汁、料理汁等で日にちの経過に伴い除々に取れにくくなる厄介なしみを言います。
 地直し 地直しとは汚点の除去に伴い発生する地色の脱色した部分を元の地色に直す事を言います。
 ヤケ直し ヤケ直しとは直射日光や電灯による地色のヤケた部分を直す事を言います。主に呉服店等で商品を展示している間に発生したものが主となります。

まれに一般消費者からの依頼も有りますが技術料は通常の生洗いしみ抜きの2倍〜4倍程かかります。
 還元漂白 還元漂白とは薬品が空気中の酸素を取り入れて漂白する事を言い、主に染料の抜染時に用いる方法です。
 酸化漂白 酸化漂白とは薬品から酸素を発生させ、漂白するもので主に変色汚点の除去に応用されます。 
 熱(あつ)み 熱みとは染料や灰汁(あく)汚点の抽出に用いる方法です。