従ってこれらブルー系の着物を着る際は直射日光の下に長時間の滞在を避け、こまめに風通しを行いながら、しみや汚れの点検を行い早めに手入れをしておく事が大切です。風通しのためハンガーに掛けての放置は室内でも1日位が限界です。
 着物を染める染料の中で特にブルー系の色は弱く、直射日光や電灯光線、蛍光灯、他長期間の仕舞いこみでも簡単に色ヤケを起こしたり、本来色抜き剤ではない酸化漂白剤でも簡単に色が剥がれてしまう商品が殆どです。

絞りの変色

この範囲のしみの除去だけで費用は15,000円程、剥がれた色を補正するのに約20,000円、合計35,000円程かかってしまいますが、右の写真のように綺麗にする事が出来ます。

変色してしまったしみを除去すると地色も一緒に剥がれてしまいます。
真っ白に脱色してしまえば少し補正がし易いのですが、赤く変色してしまいますので、特に高度な補正技術が要求されてしまいます。

20年以上前の振袖です。
地色は紺色で絞りと最悪の条件です。写真では変色が良く見えませんが、実物ではもっと濃い色の変色じみです。
しみは付けてしまったけれど乾いたら見えなくなってしまったしみが長期間の仕舞いこみで変色してしまったものです。

 しみが残りますと補正後が見えてしまいます

 しみは完全に脱色しなくてはなりません

しみより地色の方が先に脱色してしまいます 

 20年以上経過したと思われる変色汚点

水色綸子シボリ柄祝着

下の写真は出来上がりの写真です

やむをえず、ベタベタになってしまった金彩加工を全て除去しました。金彩加工の糊(バインダー)は実際に落とそうと思うとなかなか落ちにくいものです。

模様の一部を拡大して見ますと、金彩加工が半分以上はがれて薄くなってしまっています


染色補正の仕事は非常に繊細で多種、多様、多彩です。こうして補正した後も着用すれば必ず汚れも付いてしまいます。何がなんでも、後々の手入れの事も考えて直す必要が有ります。私共では、直した着物を末永くご愛用頂くため手間暇を惜しまず、確かな技術を駆使して出来るだけ完全な形に復元する事を大前提で頑張っております。

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模様の一部、約80%を私共で彩色・金彩加工を施したものです。

左の写真は全ての模様を金彩で加工された附下です。

金彩加工の金彩を固着するために使用される糊(バインダー)の種類によって、5年以上経過しますと、ベタ付きがはじまり、最後にはどうしようもなくなってしまいます。

この品は正にベタベタで着物をたたむのさえ困難となってしまったものです。

写真Dはぼかし抜きをしたもので、模様の一部も消えていまいます。

写真Eは、抜染した後の地色を染め込み、消えてしまった模様のヒモの部分を補正したものです。

乳製品飲料水をこぼして付いてしまった伊達衿の色です

 
特殊技術を要するしみぬき例

写真@は、付着したタンパク質のシミを除去した後に残った異色の赤色です。

B

C

写真Aは、模様を残し、付着した赤色だけを除去するため、抜染剤として最も強い三品改良液を餅米で作った糊に混ぜ合わせ、セロハン筒を使用して模様の白場に塗り、蒸気で蒸して抜染しているところです。

この作業は一挙にシミヌキをする事が出来ず、範囲は一回に500円硬貨程度の範囲で5回〜10回以上の漂白作業が必要で布地と相談しながらの難しい作業となります。

従ってかなり高度な技術と気の遠くなるような作業が必要で、一般のシミヌキ店ではあまり関わりたく無い仕事です。

先ずは三年前の乳製品飲料水のタンパク質が固まってしまったシミを取り除いたものです。
この先赤い色を抜染すると模様の色も抜けてしまいますので、共衿の方は、模様を残し、白場の赤色だけを抜染します。胸の方は地色が有るため、赤色を抜染した後に地色を補正しなくてはなりません。従って同じ赤色でも抜染の方法が異なります。

20年以上前に着た着物で、仕舞ったままにしていたら、こんなになってしまったと持ち込まれた振袖の裾の部分です。

トイレ等で濡らしてしまい、乾いたら見えなくなっていたので、そのまま仕舞込んだものと思われます。

H22.12に完成したものです

特殊加工(ベタ付き金彩加工の修復)

D

E


剥がれた色は模様の輪郭から細い筆で描き出し、続いて色の濃淡に合わせながら補正します。
この作業は、染料がにじみ出したり、布地の表面だけしか染料が乗らなかったりで、かなり高度な技術が必要です。
じっくり、腰をすえて、根気良く直す事が要求されます。こうした作業の出来る職人は貴重な存在です。 

出来上がった結果は技能グランプリの第1課題(紋様消し作業)と同様の作業で壊れた模様の復元には何倍もの手間がかかってしまいます。こうしたしみ抜きの加工料金は、実際にかかった手間の半分以下しか頂けませんが、一ヶ所のしみの為に着られなかった着物が再び着て頂ける事に喜びを感じ、つい引き受けてしまうのです。 

水色一越紅型模様中振袖の作業例

同じ赤色を除去するのも、模様や地色によって、使用する薬品や方法を変える必要が有ります。

諦めていた古いシミのしみぬき例

 20年以上経過して気が付いた、変色しみが左内袖の中央に現れた中振袖です。水色地の紅型調模様でこの変色しみは、しみが抜ける前に地色の方が先に脱色してしまうので、難解なしみの代表です。

@

A

縫ったままでは、縫込みの中のシミを除去する事が出来ないのと、その他にも沢山のシミと汚れが強いため、着物を全部ほどきました。

中央の白い部分はシミヌキ試験をしたものです。

変色しみを除去しますと、地色の色によって地色は勿論模様まで壊れてしまいます。通常酸化漂白では中央の赤い花のように色が剥がれる事はあまり無いのですが、ブルー系は写真のように完全に色が剥がれてしまいます。

写真Bは、抜染剤を除去したもので、模様を壊さず付着した赤色だけを抜いたものです。

写真Cは、胸の部分で地色が有るため、付着した赤色の除去方法が異なります。この方法は赤色を除去した後、地色を部分的に染める(補正)ため、抜染した周囲をぼかして抜染しなくてはなりません。

 私共では、こうした品は私共が頑張らなければ只のお荷物となってしまうため、営業採算を度外視し承っております。ちなみに加工料金は通常の生け洗いしみぬき料金の倍を上限としております。但しブルー系は3倍が上限となります。(加工料金は料金表を参照して下さい。)