左の写真は20年以上仕舞ったままにしていた留袖です。何軒かの専門店に相談したが、どちらのお店でも全て断られてしまったとの事です。

 ここまで変色してしまいますと、私共でも通常ではお受けする事は出来ませんが、お客様の強い要望により、お預かりして試験をする事にしました。

 試験の結果、二通りの方法で直せる事が判明しました。一つの方法はしみの部分の成分を除去した後、金彩加工を施す方法です。この方法だと模様のイメージが大きく変貌してしまう事が予想されます。

 もう一つの方法は模様の金砂を除去した後、変色を一粒づつ根気良く漂白して金砂加工を施す方法です。この方法は模様のイメージを尊重する事が出来ますが、職人の立場から申しますと手間も神経も使う仕事となりますので出来れば余り関りたく無いのが本音です。加工代は通常の生け洗いしみぬき料金の3〜4倍程度はご予算下さい

この品のお客様は模様のイメージを尊重する方法を選択されました。

 この作業は縫ったままの状態では不可能のため全てを解いて反物状態にさせて頂きました。

(当然比翼(ヒヨク)も胴裏も変色が激しく、裏地はしみぬきをするより、新しいものとお取替えをした方がお得となります)

 作業手順は先ず石油系溶剤で全体を洗った後、模様の中の金砂加工を全て除去し、変色しみを一粒、一粒、各10回以上の漂白を行ったものです。(左の写真)

 模様全体のしみの除去には通常の生け洗いしみぬき料金の10倍以上の手間がかかってしまいました。

 この品を拝見した際、変色が激しく、布地も弱くなっている事が考えられ、神経を使いながらの作業となり、手間も時間もかかり、営業採算を考えれば、お預かりしない方が得策なのですが、お客様の熱意に負けてしまうのが私共です。 

お客様の要望に応えて
20.1.18

東京都品川区 M・G様


下記の写真は、平成19年現在86歳になる方が女学校時代に刺繍した色紙との事です。戦時中に濡らしてしまい、そのまま現在まで放置していたものだそうです

 この着物は、私のお宮参り(昭和46年)や三歳(昭和49年)の七五三の時に使用したものになり、その後は、実家の箪笥にしまってありました。

 この度、私にも念願の子供が昨年の11月に生まれ、その子のお宮参りに私が祖父母から当時買ってもらった着物を着せてあげたいと思い両親に相談したところ、着物の管理が行き届いてなく染みが多々あり、とても使えないと両親から聞きました。

 その後実家に帰り着物の状態をみて私も確かに凄い状態だと思いました。私の祖父は我が子(曾孫)を見ずに他界しましたが、祖母には今までの感謝もあり出来れば当時、私が着た着物で曾孫のお宮参りの写真を撮り送ってあげたいと思い、色々調べたり聞いたりしました。

 しかし池田様も昨日の電話でおっしゃられたとおり、何処も相手にはしてもらえませんでした。そして今回「しみぬき池田補正所」の池田様のことをネットで拝見し、お電話を掛けさせて頂くに至りました。

私共の要望は、着物を我が子のお宮参りや七五三につかえるようにしていただきたいのです。もちろん、全てきれいに染みを取ってもらえれば助かりますが、年月も経っておりますので大きく目立つ染みだけでも若しくは薄くして頂ければと考えております。

 出来上がりの日にちについて、まだ寒い日が続いており我が子のお宮参りは春頃に遅らせる予定でおりますので、完成の日にちは池田様にお任せいたします。

 大変困難な作業になるかと思いますが、専門家の目で見ていただき日数及び費用のお見積もりをお願い申し上げます。
                                           平成20年1月17日      早々
 本来ならお返し(返品)となる品物ですが、お客様の厚いご要望で、ついお預かりしてしまった品物です。加工代は10万円以上の手間が予想され、しみぬき作業にも相当神経を使わなくてはならず、営業採算を考えますと完全にお返しした方が良い品物です。

 私共は着物を綺麗にするのが仕事で、お客様に(どうしても何とかして欲しいと)頼まれますと、職人の悪い癖と申しますか?
 お断り出来なくなってしまうのが現状です。職人のやる気に上手にスイッチを入れるのも、切るのもお客様次第です

下の写真は全ての変色じみを薄くした後金彩加工を施し完成したものです。

最も印象に残るしみぬき例 

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60年以上経過した色紙布です

下記の写真が36年経過した男児のしめです。カビの症状は4期と判断されます。